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孤独は創造者の通う学校〜孤独な人ほど成功しやすいワケ

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ワンピースやナルト、ハリーポッターといった人気作品では、主人公が勇敢に問題に立ち向かい仲間とともに切磋琢磨する様子が映し出され、それを善とする風潮が流れていますが、現実世界で多くの人を救ったり偉業を成し遂げる人というのは友達に囲まれる主人公タイプの人ではなく孤独で内向的であまり協調性のないような人だったりします。

多くの人が信じる常識は、「成功するには大胆で勇敢」、「社交的で人間関係を円満にすれば幸福になる」というものですが、実は多くの人が外向型のふりをしており、社交的なイメージのアメリカ人の3分の1から2分の1が本当は内向型の人間であり、25〜48%が孤独だという研究もあるほどです。

法政大学の教授のアンケートによれば、400人のうち9人の学生が「トイレでランチをとったことがある」と答えており、その主な理由が「友達のできない寂しい人間だと思われることが嫌だから」ということで、せっかく入学した大学を中退する人も後を絶たないと言います。

一般的には、人前でハキハキとした声で雄弁に話したり、外交的で人に囲まれているような人がデキる人間に見られ、孤独な人とは音楽が止まったときに椅子に座っていないゲームの敗者のようなイメージがあります。そこで今回は、その価値観とは反対に孤独と内向的な人こそ成功するための莫大な価値があるということを紐解いていきます。

孤独で友達の少ない人ほど成功しやすい理由

世の中の成功者や偉人の経歴を調べてみれば、必ずと言っていいほど孤独の時期が数年存在します。

アルベルト・アインシュタインは現在の科学者ですら驚愕するほどの理論を打ち立てた人物ですが、その理論を作り上げる1902年から1909年の約7年もの間はスイス特許局で働く傍ら一人で部屋にこもって研究を続けており、理論が認められた後も自分のことを次のように説明しています。

「私は一頭立て用の馬で、二頭立てにもチームワークにも向いていない……なぜなら、明確な成果を手にするためには、ひとりの人間が考え、指揮することが欠かせないとよく知っているからだ。」

孤独な時間がEinsteinの想像力を膨らませた

『ローマ帝国衰亡史』の著者であるエドワード・ギボンが「孤独は天才が通う学校である」と述べたように、孤独を経験した人はそうでない人と比べて優れた結果を出すという仮説を裏付ける実験データも存在します。

心理学者アンダー・エリクソンの実験では、まずベルリン音楽アカデミーのバイオリン専攻の学生を3つのグループに分け、『極めて優秀』、『優秀』、『演奏者以下』というグループで調査を行ったところ週に費やす時間は全員50時間程度と同じくらいでしたが、上位2グループの学生は個人練習に大半の時間を費やしていたことがわかったそうです。

これは他の分野を調査しても同じで、例えばチェスの世界では「ひとりで真剣に学ぶこと」がプロになれるかどうかの指針になるようで、グランドマスターは一般に、修行時代の10年間に5000時間という途方もない時間をひとりで指し手の研究をするために費やすと言います。

プロは数千数万時間、孤独な試行錯誤を続けてきた人である

すべての人が人生のどこかで孤独を経験しますが、特に多い時間を孤独に過ごす人というのは内向的な人が多く、彼らの多くがお金やセックスや権力といった外的要因よりも心の満足を求める傾向があり、自分の好きな分野を突き詰めていくうちに成功者へと上りつめる場合が多いものです。

生まれつき無口だったマハトマ・ガンディーは、授業が終わると一目散に家に帰り本ばかり読んで過ごし、人前でしゃべることが苦手な少年時代を送って何度も自分の内気さを直そうと悩んでいましたが、後に内気さによって不必要なことにエネルギーを使わない抑制こそが自分の最大の財産の一つだったと気付き自伝に次ように記しています。

「私は自分の思考を抑制することを自然に身につけた。考えのない言葉をしゃべったり書いたりすることはなかった。(中略)私の内気さは、本当のところ、私の盾であり甲羅である。それは成長をもたらす。私が真実を見抜くのをいつも助けてくれる。」

やさしいやり方で世界を揺さぶることができる。 - Mahatma Gandhi

これは一部の成功者や偉人に限らずに、次に述べるような人たちは内向的で孤独だったために偉業を成し遂げたと言われています。

アイザック・ニュートン、岡本太郎、ショパン、J.K.ローリング、ラリー・ペイジ、スティーブン・スピルバーグ、モーセ、ブッダ、キリスト、デール・カーネギー、ビルゲイツ、井深大 、スティーブ・ウォズニアック、イーロン・マスク、ジェリー・ヤン...

では、我々が孤独や内向的な性格を活用し、ただの寂しい孤独から強く尊敬の対象となる孤高へと昇華していくためにはどういった考えを持って進んでいけばよいのでしょうか。

集団を引き連れる虫ではなく、孤高の龍となれ

我々は、学校や会社では人間関係や付き合いという言葉をチラつかされ、いかにも社交的で外向的な人こそが船の先頭でリーダーシップをとれるかのように言われてきていますが、実はピラミッドの頂点に登るほどにそれらの常識とは逆の事実が判明してきます。

確かに外向型の人は社会的にはリーダーシップをとりやすいですが、近代経営学の発明者ピーター・ドラッカーは自らの経験を踏まえて有能なリーダーについて次のように語っています。

「この50年間に出会ったり一緒に働いたりしたきわめて有能なリーダーのなかには、オフィスに閉じこもる人物もいたし、超社交的な人物もいた…共通する唯一の特徴は、彼らが備えていないものだった。すなわち彼らは『カリスマ的才能』をまったくあるいは少ししか持っておらず、それを利用することもなかった。」

人を動かすのにカリスマ性は必要ない

要するに、リーダーシップを発揮するために人を動かす高度なコミュニケーションが得意である必要はなく、むしろ独自の世界観を持つ人というのは孤独感から生まれるエネルギーを自分の仕事や作品に思いっきりぶつけることができる力をもっているようです。

中国のことわざには、「一人の中国人は龍でも、集まると虫になる。一人の日本人は虫でも、集まると龍になる。」というものがありますが、優れた組織を作り上げる人は孤独な期間に自分の能力を開花させて龍となり、集まっても龍の組織を作れる人ではないかと思います。

たとえば、ビジネスマンのジョブズ、デザイナーのアイヴ、エンジニアのウォズといった龍が集まるAppleではそれぞれが孤独の期間を経験した者たちで構成されています。ウォズニアックに関しては会社員時代からパソコン設計をする際には朝の6時半から夜遅くまで単独行動で仕事をしており、自伝の中でこの孤独な日々を「生涯で一番ハイだった」と述べ、偉大な創造に憧れる子供に向けてこう記しています。

「これまで会った発明家やエンジニアの大半は僕と似ている -内気で自分の世界で生きている。彼らはアーティストに近い。実際、彼らのなかでもとくにすぐれた人たちはアーティストそのものだ。そして、アーティストは単独で働くのが一番いい。(中略)もしきみが、発明家とアーティストの要素を持ったたぐい稀なエンジニアならば、僕はきみに実行するのが難しい助言をしよう -ひとりで働け。独力で作業してこそ、革新的な品物を生み出すことができる。」

クリエイティブな仕事がしたいなら、一人で働け Photo  By Gage Skidmore, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=63344547

ウォズニアックは典型的な内向型エンジニアですが、内向型と外向型の大きな特徴として感受性の違いがあります。続いて、感受性の豊かさがもたらす大きな違いを見ていきます。

孤独な内向型はクリエイティブ面で偉大な結果を残す

内向型か外向型かを調べる有名な心理学の実験で、舌の上にレモンを数滴たらすというものがありますが、内向型の人は外向型と比べて唾液の分泌量が多く、またヘッドフォンで心地の良い音量は外向型が平均72デシベルに設定するのに対して内向型は平均55デシベルに設定するといいます。

これはすなわち、内向型の場合は少ない刺激で反応しやすいことを証明しており、中にはその敏感さゆえに周りの目を気にして不登校や引きこもりなど自分の殻に閉じこもるケースも多々あるといいます。

一見、引きこもりは社会の落ちこぼれのように言う人もいますが、彼らは外向型の人に比べて金銭やセックスなどの外部の報酬よりも内面の充実を大切にするので、完全に集中し没頭できる「フロー(ゾーン)状態」に入りやすいことがわかっています。

著名な心理学者ミハイ・チクセントミハイ氏によれば、フロー状態のときは、外部の報酬や承認などの意識が外れて「仕事を続けることだけを目的として、何日もぶっ通しで働ける」そうです。結果、一つの仕事にかけた時間は成果につながり彼らを成功者たらしめることになります。

考えてみれば、すべての人はどこかに孤独を感じており、外向型の人はその孤独の寂しさと向き合うことから逃げ、お金や承認、権力やセックスといった刺激の強い報酬で空しさを埋めているだけなのかもしれません。

投資の神と呼ばれるウォーレン・バフェットは、つねに自分の「内なるスコアカード」に従っていることを誇りにしており、彼はこの世界を「自分の本能に焦点を当てる人」と「周囲に流される人」と二分して、自分のことについて次のように語っています。

「自分であれこれ判断するのが好きなんだ。システィーナ礼拝堂の天井画を描いているようなものだ。『なんてすばらしい絵だろう』と褒めてもらうのはうれしい。けれど、それは自分の絵なのだから、誰かに『なぜ青ではなく、もっと赤を使わないんだ?』と言われたら、それで終わり。あくまでも自分の絵だから。彼らがなんと言おうがかまわない。絵を描くことに終わりはない。それがなによりすばらしいことのひとつだ。」

人は人 吾はわれ也 とにかく吾が道を吾は行くなり(西田幾太郎)

クリエイティブで独創的なアイデアほど他人から受け入れられることは少なくなり孤独に苛まれるもので、名刺の裏に落書きをするビジネスを成功させたヒュー・マクラウド氏もまた、アイデアを実践してきた10年間は孤独で認められない時期があったと言います。

結論ですが、ウォズニアックがそうであったように、内向的な人ほど外部の報酬には目もくれずに行動をし続けることができるため、たとえ孤独であったとしてもその状況を楽しむことができるのだと言えます。結局のところ、結果というものは一つのことに取り組んだ時間に応じて付いてくるので、孤独の時期というのは誰にも邪魔されずに自分の楽しいと思えるアイデアを練り実践するいい機会だと捉えてみてはいかがでしょうか。

孤独はモンスターを生み出す可能性もある毒薬

ここまで孤独を肯定することを述べてきましたが、一方で孤独はモンスターを生み出す毒薬となることも多々有ります。

「子連れ狼」などの漫画原作や脚本、小説を手がける小池一夫さんは、「己の孤独を受け入れてこそ愛や友情が成立する」と孤独を肯定する一方で、孤独と孤立の違いを指摘し次のように述べていました。

「「孤独」と「孤立」は違う。全く違う。僕は、己の中に孤独を持て、とよく言うが、孤独は自分を育てる。孤立は、その身の内に怪物を育て、やがてその怪物のコントロールを失う。人間は、もともと孤立して生きる動物ではないのだ。人と繋がれ。そして、孤独であれ。」

孤独は良薬になる一方で毒薬になることもあり、母の支配を受け秋葉原無差別殺傷事件を起こした加藤死刑囚やイスラム過激派に加わった若者の多くが社会から孤立して童貞であったことや、少年院送致となった非行少年が親から虐待を受けている比率が6〜7割を占めているという事実もあります。

犯罪のほとんどが孤独感とストレスから生まれるのではないか

孤独が何年も続けば誰でも自分には価値がないのではないかと自信を失うこともあるでしょうし、まるでこの世に自分の存在価値がないと感じ涙で頬を濡らしながらパンを食べるような経験もあるかもしれません。

多くの著名な画家や小説家ですら孤独という毒薬によって自ら命を絶つ悲しい終わりを迎えましたが、孤独を味方にし心の静寂を愛して進むことで人は強くなっていくのだと思います。

今まさに孤独を感じているのであれば、それは自らを飛躍させるチャンスだと思って孤独を我がものとした後に笑っているあなた自身を思い浮かべてみてはいかがでしょうか。

まとめ:孤独を理解しエネルギーをぶつけろ

結局のところ、孤独の時間を過ごしながらも高みへ昇った人たちは、寂しいとただ嘆くだけでなくその期間のエネルギーを作品や仕事にぶつけていったことがわかります。

要するに、あなたに友達がいないのが問題なのではなく、孤独の力をぶつける表現方法を見つけていないことが問題なのであり、その表現方法を見つけて一歩を踏み出せばそこから大きな価値を生み出すことができるようになるでしょう。

芸術家の岡本太郎さんは両親に連れられて10代でパリの地を踏みましたが、自分の目指す芸術の方向性を見つけておらず、他の画家が流行りの絵を模倣して褒めあう様子を見て「うそ寒いような気がした」と述べており、迷いに迷って絵らしい絵の描けなかった2年半は孤独で苦しかったといいます。

見知らぬ地で結果を出す重圧と孤独感は地獄のようだった。 

考えてみれば、人を惹きつける仲間を持った漫画や映画の主人公はどこかに孤独と戦ってきた様子が描写されており、どの作品でも孤独こそが人を成長させるという原理が隠されているのかもしれません。

人間は必然的に年をとればとるほど孤独になる可能性は高くなりますが、より多くの時間とエネルギーをもって自分らしく生きるためにもできるだけ早く孤独と向き合ってみてはいかがでしょうか。

参考・引用

内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力 / スーザン・ケイン 講談社 ,~果てしない孤独~独身・無職者のリアル / 関水徹平 藤原宏美 , なぜ若者はトイレで「ひとりランチ」をするのか / 和田秀樹 祥伝社 , 強く生きる名言88 孤高のことば / 萱野稔人 東京書籍 , 独り居の日記 / メイ・サートン みすず書房 , オリジナルワンな生き方 / ヒュー・マクラウド ディスカヴァー・トゥエンティワン , 群れずに生きる / 筧利夫 角川書店 , 「孤独」が人を育てる / 小池一夫  講談社 , ビジョナリーカンパニー / ジム・コリンズ 日経BP , ギャングース / 肥谷圭介 , 起業は GO IT ALONE! 最小投資・再小人員で大きく成功する方法 / ブルース・ジャドソン 亜紀書房

【筆者所感】

カフェで友達と話すも会話が途切れスマホばかり見ながら過ごす女子高生や、スマホを片手にベンチでお弁当を食べているサラリーマンを見ると、孤独に生きながらも誰かと繋がっていたいと感じているんだと思えてなりません。

SNSが普及したことで、隣の家にお醤油を借りるような密接な繋がりは消え、代わりに繋がりたいときにつながる”便利な人間関係”が当たり前となってきましたが、そのような薄い繋がりでは結局孤独感を拭い去ることはできないでしょう。

これを進化と捉えるのであれば、国民全員が情報発信できる”国民総クリエイター時代”において、孤独を制してオリジナリティを出せる人同士が繋がって、次の時代を切り開いていくのかもしれないですね。

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