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想像力のない人ほど睡眠時間を削ろうと考える -睡眠は成幸の元-

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ベッドに入って7時間以上寝ることに罪悪感を感じながらも毎朝布団から出るのに何度もアラームを止めなければ起きられない疲労者 たちへ...

Googleで「sleepy(眠い)」と検索をかけると1億5000万件もヒットし、インスタグラムで「#sleepy」で検索すれば2000万件もの写真や動画がヒットするように、現代を生きる多くの人たちは眠気と戦いながらパソコンやスマホで仕事に向き合っていると思われます。

多くのビジネスマンがベンジャミン・フランクリンの「Time is money(時は金なり)」という合言葉のもとに「睡眠時間を削ればやりたいことや成功への活動に時間を割ける」という20世紀に刷られた神話を信じており、2000年になって250カ国を対象とする睡眠習慣の調査では8時間睡眠を取れている人はわずか15%に過ぎず日本語のKaroushi(過労死)が世界共通語になるほどでした。

人の下で目をこすりながら働かされた挙句コンクリートに顔を埋めて永遠に眠るのか?

確かに結果を出した人の中にも睡眠時間の少なさを公言する人がいますが、「私は1日5時間の睡眠で十分」と自慢げに語るエジソン自身、昼間はうたた寝をすることで知られており、2015年にゴールドマンサックスに入社していたサルブシュレシュス・グピタ氏が徹夜明けに父親に涙声で電話したあと自殺した経緯を考えてみれば睡眠と命を削ることで得られる結果はギャンブルの報酬に近いような気がします。

体重を減らそうと脇腹の肉をナイフで切り取る人はいないにもかかわらず、多くの人は時間を手にいれたいがために睡眠時間を削ろうとしますが、果たしてこれから紹介する睡眠に関する驚くべき調査を知ってもまだあなたは睡眠時間を削ろうと考えるでしょうか。

数時間を手にする代わりに悪魔に捧げる睡眠不足の代償

睡眠不足の大きな要因は社会の工業化ですが、この50年間でアメリカ人の睡眠時間が平均2時間も減ったにもかかわらず、ある調査によればアメリカ人労働者一人当たりの生産性は年間2280ドルも低下しているといいます。

その調査によれば、プレゼンティーイズム(出勤していても生産性が上がらない状態)がアメリカに与える損失は年間630億ドル(約6兆5000億円)を超えると言われ、ハーバード大学医学部のロナルド・C・ケスラー教授は不眠がもたらす損害について次のように述べています。

「米国人は不眠のせいで仕事を休んでいるわけではない。出勤はしているが、疲れて仕事がはかどらないのだ。情報経済において疲労以上に生産性に影響を及ぼす条件はなかなか見つからないだろう。」

睡眠不足は生産性、健康、幸福、モチベーションを下げる要因

また、時間を捻出しようと削ったことによる睡眠不足により永遠に時間を取り戻すことができなくなった人も多く、スペースシャトル「チャレンジャー」号の爆発や巨大タンカー「エクソン・バルディーズ」の原油流出座礁事故、さらに1995年の149名の死者を出したアメリカン航空の旅客機墜落事故も責任者が睡眠不足だったことが事故原因の一部だとされています。

NASAが実際に夜間飛行するパイロットの疲労を計測したところ、5秒から10秒もの短い時間、眠りにおちることが度々あったといい、着陸前の30分間にもウトウトする場合もあったようです。

対策として休憩時間に25分の睡眠をとるようにしたところ、ウトウトする回数が120回から34回に減ったことで、フライト前に仮眠を取ることが世界の航空業界の常識となりましたが、パイロットのような訓練すらされていない自動車ドライバーはこの事実に気づかなければ自分だけでなく他人の時間すら永遠に奪う事故を起こしてしまうことでしょう。

1〜2時間の睡眠不足で事故は2倍に増える。-2016年 アメリカ自動車協会交通安全基金

1950年代に全米ガン協会が100万人以上を対象にした、運動、栄養、喫煙、睡眠に関する大規模な調査で6年後に追跡調査をしたところ、運動や食事よりも死亡率と最も関係性が高かったのは睡眠時間だったいいます。

それによれば、最も死亡率が高いのは睡眠時間が4時間に満たない人と、9~10時間眠る人で、寝不足も寝すぎも良くなく、睡眠が8時間前後の人たちは最も死亡率が低かったといいます。

海軍の兵士を対象にした1週間の実験では、何も活動をしない兵士は初日は16時間程度眠っていたようですが最終的に8時間前後の睡眠時間になったということを考えれば、我々の睡眠時間はそもそも8時間程度が妥当で、それを4時間も徹夜をして埋め合わせようと週末に10時間寝ようとする行為が最も寿命を短くし、生産性と健康を損ねる行為だと言えるのではないでしょうか。

睡眠を削り、短期的な利益と引き換えに本当に大切なものを見失う。

ドン・キ・ホーテ』の著者ミゲール・デ・セルバンテスは眠りに関してこう述べています。

「最初に眠りをつくった人に祝福あれ!(中略) 眠りは、飢えた者にとってのパン、渇いた者にとっての水、寒さに震える者にとってのぬくもり、暑さに苦しむ者にとっての涼しさ。世界のあらゆる楽しみを安く買える通貨であり、王と羊飼い、愚者と賢者すら等しくする天秤だ。」

セルバンテスは睡眠を通貨と例えていますが、実際睡眠をお金のように捉える考え方があり、睡眠不足とは借金を抱えているようなものでいつか必ず支払わなければならず、最悪の場合、破産をするかのように気付いたらあの世だったということもあり得ます。

アメリカに睡眠革命(スリーピング・レボリューション)を巻き起こしたハフィントン・ポストの創業者でもあるアリアナ・ハフィントン氏は、睡眠を削り仕事をしすぎて倒れてしまった際に自身の生活習慣を見直すことにしました。↓

ハフィントンさんは動画の中で「リーダーに求められるのは、タイタニックが衝突する前に氷山を見つける力」と言っていますが、これまでのただ進むだけで良かった20世紀の「生産型社会」ではなく、一人一人が自分の方向性を見定め変化に対応していかなければならない「創造型社会」の21世紀には新たな可能性を見出すためにも、もう一度睡眠に関して考えていく必要がありそうです。

単なる成功ではなく成幸を目指すなら目を瞑れ

投資の神ウォーレン・バフェット氏はバークシャー・ハサウェイの2008年の年次報告書の挨拶文にて「どちらかを選べと迫られたら、私は増収のチャンスと引き換えでも睡眠を一晩たりとも譲らない。」と述べており、またマイクロソフトのCEOサティア・ナデラ氏もインタビューにて「夜は8時間眠った時が最も調子がいい」と話しているように、最近では社会的に認められる"成功"を手にするのと同じくらい、幸福感をもたらす”成幸”を手にするためにも睡眠を優先する経営者が増えてきました。

フランス人のチベット仏教僧で分子遺伝学者のマチウ・リカール氏は、脳波測定で尋常ではないガンマ波がみられたことから、神経学者たちに「世界で最も幸福な男」と呼ばれていますが、彼は幸福をもたらす考えとして次のように述べています。

「隠遁して黙想にふける人々は、何もしていないのとは程遠い。常に心のトレーニングをしているからだ。しかしそこには、消し去るべき『雑音』も『ごみ』もなく、解消すべきストレスも、整理しなおすべきカオスもない。そのため睡眠中の修復作業が少なくて済む。だから瞑想者は眠りが深い。」

↑心の状態によって幸福の感じ方は変わってくる

睡眠不足になると感情的になりやすくネガティブな単語が記憶に残りやすくなるという実験もありますが、睡眠によってもたらされる幸福感は人を魅力的にしてくれるため、仕事や創造性だけでなく良好な人間関係を築く上でも役立つと言えます。

人を惹きつけるためにも睡眠は重要視されており、シンガー・ソングライターのクリスティーナ・アギレラさんは「みんな美容液にお金をかけるけれど、夜ぐっすり眠ることがすべての違いを生む」と美の秘訣を公言していますし、女優のジェニファー・ロペスさんもまた「睡眠は私の武器」として次のように述べています。

「私たちは時々、次にすべきことにとらわれて、人生にほんとうに必要で大切なものを忘れてしまう。私は眠る時間をとても大切にしている。睡眠は食事や運動とまったく同じように重要だから。」

睡眠は美しさの構成要素 Photo By Ian Smith from London, England  - Christina Aguilera,  By dvsross  CC 表示-継承 2.0,

ジェニファー・ロペスさんやキャメロン・ディアスさんは美を保つために「睡眠、食事、運動」の三つを重視していますが、この3つの中の特に運動を重視しているスポーツ選手も現在は「睡眠をとらなければ、いくらハードトレーニングをしても無駄になる」という常識があるようです。

特に有名な調査はスタンフォード大学睡眠障害クリニックのシェリ・マー氏が2011年に発表した論文で、スタンフォード大学の男子バスケットボール選手11人の平均睡眠時間を6時間半から8時間半にするように心がけてもらったところ、選手のパフォーマンスは驚くほど向上しダッシュのタイムは0.7秒短縮、フリースローとスリーポイントシュートの成功率はそれぞれ9%と9.2%まで向上したそうです。

有名選手の中にも睡眠崇拝者は多く、世界最速の男ウサイン・ボルト選手も「睡眠は自分にとってきわめて重要だ。トレーニングしたことを体に染み込ませるには休息と回復が必要なんだ。」と述べており、テニスのロジャー・フェデラー選手に関しては「1日11時間から12時間眠らなければ足りない。僕にとって、それより少なくすることは自分を傷つける行為だ。」とまで言っており、ウィンブルドン前には良質な睡眠のために家族と自分用に家を二つ借りていたと言います。

寝るだけで身体能力は1割向上する。 Photo By Augustas Didžgalvis - CC 表示-継承 4.0,  By si.robi - Federer RG13 (62)Uploaded by Flickrworker, CC 表示-継承 2.0, 

確かにこれまでは8時間の睡眠をとることで、人生の3分の1は眠っているとして無駄なのではないかという風潮があり、シカゴ大学のアラン・レクトシャッフェン教授の言葉を借りれば「あれだけ長い時間を費やしているのに、睡眠が私たちに何ひとつもたらさないとすれば、それは自然が犯した最大の過ち」というのも納得できるでしょう。

しかし近年では睡眠によってもたらされる効果も大きく解明され、少なくとも運動や記憶、学習、自制心や意欲の増大などにも睡眠が大きく関わっているとされており、茂木健一郎さんが「昼間とは違った働きをするために睡眠という活動へシフトチェンジしている」と述べているように、睡眠はあなたが働かなくても自動的に自らを向上してくれるアップデート期間と考えていくべきでしょう。

睡眠をデザインすることで1日の流れが変わる

仕事や夜に放送されるテレビ、SNSチェックなどの”緊急だけど重要でないこと”の多くが、睡眠をダルマ落としのダルマのように最後まで残しておいてギリギリになってようやく目を向けるような意識へと変えてしまいます。

あまりにも多くの人が睡眠を軽視しすぎている。

本当に睡眠が大切だと理解できたのであれば、まずは睡眠を確保するために1日をデザインしていく必要があり、実際に睡眠習慣を改善したことによって能力や結果が向上したという例も多々あります。

NBAのアンドレ・イグダーラ選手は睡眠習慣を改善したことで出場時間は12%増え、スリーポイントシュートの成功率が2倍以上になり、1分あたりの得点は29%増加し、フリースロー成功率は8.9%も増加したと自身の過去を振り返っていました。

Photo By Keith Allison from Hanover, MD, USA - Andre Iguodala, CC 表示-継承 2.0, 

新年の目標を達成できていない人の多くが目標に必要な1日の行動を習慣化できていませんが、1日のデザインを睡眠から考えていくと具体的にやることがより簡単に設定できるようになります。

たとえば、8時間睡眠を取ると決めて朝の6時に起床したい場合は、22時には就寝できるように21時には布団に入り明日の計画や読書に1時間費やす習慣を作るとします。そのためには、それまでに食事や風呂を済ませる必要があり、その前に運動を入れるとなれば19時代には帰宅する必要がありそうです。

こうして帰宅時間がわかれば仕事を早く終わらせようとして締め切り効果で効率も上がりますし、8時間の睡眠をとったあと早朝の6時から昨日できなかったことに取り掛かったとしても1日の時間を有効に使えるのではないでしょうか。

少なくとも、チョコレートをかじりながらコーヒーを胃袋にブチ込んで夜遅く作業をしていた頃よりも、ナポレオンのように朝の冷気を吸い込みながら誰よりも早く行動に移る方が長期的に健康へと近づき、爽やかな気分になることでしょう。

眠らないために飲むコーヒーは目覚めるために飲むコーヒーには敵わない。

世紀の初めの10年はこれから100年起ることの前触れがあるといいますが、この10年間で睡眠ルネサンスがアメリカで始まり、PRESIDENT 2018年1.29号によれば現在の日本人サラリーマンの平均睡眠時間が7時間半なのに対し、アメリカ人のグローバルエリートの平均睡眠時間は8時間半が常識になっているといいます。

最初はタバコの有害性や飲酒運転の禁止も社会に浸透するのに時間がかかりましたが、次第に睡眠障害の危険性が認知されることで世界中で8時間以上の睡眠が当たり前となってくる日も近いかもしれません。

お金を財布に入れる代わりに自販機のように働かされていたことに気づいた人間は、やがて静かに目を瞑り、自分の幸福や価値を考えることで社会を生きることになっていくでしょう。

【参考書籍・引用元】

自由時間を上手に使いこなす方法 - ローラ・ヴァンダーカム TED, スリーピング・レボリューション / アリアナ・アフィントン, 50歳を超えても30代に見える生き方 「人生100年計画」の行程表 / 南雲吉則 講談社 , ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか? 脳と体がよみがえる!「睡眠学」のABC/ ウィリアム・C・デメント, よく眠るための科学が教える10の秘密 / リチャード・ワイズマン , 眠っているとき、脳では凄いことが起きている / ペネロペ・ルイス , PRESIDENT 2018年1.29号 , 脳が最高に冴える快眠法 / 茂木健一郎 河出書房新社 , ビジュアル詳解 皇帝ナポレオンのすべて 欧州制覇への道とボナパルト家の実像

【筆者所感】

睡眠不足のひとが少し寝るだけで幸福度が上がるといいますが、睡眠を通してもう一度、自分にとって何に価値があるかを考えてみることが大切だと思います。

これは、1日の3分の1を横になると決断することでもあり、やらなければならないことを諦めて眠ろうというものではなく、自分の日々の生活の中で本当に大切なものは何かを考えて、それ以外のことはやらないと決めることでもあります。

私は睡眠に関する研究をしてみて、目覚まし時計を使わなくなりましたが、そのことによって想像がより鮮明にできるようになったとはっきり実感しています。

特に睡眠と夢の中間の時ほどクリエイティブになれる時間はないと感じて、起きる時間を多少捨てて良かったと思いました。

 

日本の茶道には武士が茶室に入る際は刀を外し、日常の緊張や不安を茶室に持ち込まないといいますが、今日からリラックスして自分の創造性のためにも寝る前にスマホやPCは部屋の外に置いてみてはいかがでしょうか。

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