魂のレベルが上がるお話

漫画を手にしたオタクエリートが次世代を創る時代へ

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2017年に北九州市は、マンガやアニメなどのポップカルチャーの産業振興を加速しようと文化庁より年間1億円の補助金を受け取り、ポップカルチャーを中心としたクリエイター達を支援すると発表しました。

さらに、インプレス総合研究所の調査によると2017年は電子書市場は前年比の124.7%の1976億円に拡大しており、アプリを含むマンガ読者が8割近くを占めているそうで、ユーザーのトップが30代男性という結果を見れば今の時代マンガを読むとバカになるや、マンガは子供向けという考えはかなり古いものだと言えます。

電子書籍と翻訳により漫画を読む人間は確実に増えて行く Photo by Flickr

そこで今回は、こそこそマンガを読んでいて多少の罪悪感を感じている人には朗報になるかもしれない、マンガを自分の人生に活用できるような視点で掘り下げていきます。

マンガを読書にカウントすることは理にかなっている

苫米地英人さんや中野信子さんなど、脳科学者にはマンガを読む人も多いのですが、中でも茂木健一郎さんは「世界一受けたい授業」という番組内で「文字を読むだけだと1分間に1000文字しか情報を処理できないが、マンガなどの絵がある場合だと2000文字もの情報を処理ができる」といい、実際に実験を行ったところ、マンガを読んだ場合小説よりも多くの知識を取り入れられたと言います。

確かに考えてみれば、我々は生きていく上で必要のない情報は忘れるようにできていますが、心や感情に訴える臨場感を伴うストーリーは忘れることなく他人にも伝えたい、共感したいと思うものです。

つまらねぇ教科書より、マンガは数倍記憶に残る Photo by Flickr

東大やアメリカの名門大学を卒業した人にとって、勉強はいかに時間をかけるかではなくいかに効率良くするかが大切であり、そのために無駄な時間を削ったり睡眠や食事などの計画まで見直しますが、オタクエリートと呼ばれる高学歴読者がマンガを読む理由の一つは単に楽しいからだけではなく、知識や情報を得るのに効率がいいからかもしれません。

例えば、「ドラゴン桜」では受験、「加治隆介の議」では政治、「家裁の人」では司法、「ヘルプマン」では介護、「宇宙兄弟」では宇宙に関して知りたいことをとてもわかりやすく楽しく描かれており、初めて読む人でもその世界を知るきっかけとなりますし、今売れている内容というのは今の世間が何を求めているのかのヒントが散りばめられています。

知りたい世界はマンガで学べ Photo by Flickr

日本の起業家に大きな影響を与え自身も宇宙事業を手がける堀江貴文さんは、中学生時代に買ってもらったパソコンにドップリはまって、一人でパソコンで遊びすぎた結果学校の成績は下がってしまいましたが、後にそれが起業に大きく役に立ったといいます。

かつてゲームや電子音楽を遊びで作っていたオタクたちは今やIT業界で重要なポジションにいますが、遊びや想像力が仕事に直結する時代にマンガを読まないことは非常にもったいないことなのではないでしょうか。

革命児や異端児こそマンガを読んでいる場合が多い

「自分の好きなことをやれ」と言う大人は多いですが、言われた側にしてみれば「その好きなことが分からない」というのが正直な話なので、そうではなく「マンガでもテレビでも思いっきり見て、その中で興味のあることをやれ」と言ってくれた方が少しはマシになるでしょう。

「エースをねらえ!」でテニスを始め海外遠征にもマンガを持ち歩いていた松岡修造さんや、「がんばれ元気」を読んで格闘技を始めた須藤元気さん、さらにはイチローや田中将大選手は「キャプテン」に影響を受け、「キャプテン翼」は中田英寿やジダンをサッカーへと導いたというのは有名な話です。

「キャプテン翼」に影響を受けたプロ選手は多い By Neogeolegend at English Wikipedia, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=20934619

「ドラゴン桜」や「宇宙兄弟」「バガボンド」などの編集を担当し、クリエイターエージェント会社コルクを創業した佐渡島庸平さんによれば、スポーツだけではなくビジネスの世界でもマンガを愛する人は多いようです。

「大人になって、お仕事で知り合った社長さんたちも、じつはいっぱいマンガを読んでいるんです。『ドラゴンボール』に登場する仙豆という豆にヒントを得て、食料問題を解決しようとしている社長さんもいます。マンガはお仕事のヒントにもなってくれるのです。」

マンガの神様である手塚治虫さんはディズニーに影響を受けてマンガを描き始めましたが、手塚治虫さんに影響をされたドラゴンボールの鳥山明さんや石ノ森章太郎さんもいて、さらに彼らに影響される人々が現れ、その意志は脈々とマンガの世界に受け継がれていきます。

そもそも、マンガとは作者が自分の好きな分野で苦しみ抜いてどうすればもっと面白くなるかとアイデアを考えた末に世に出したものなので、売れるマンガには感情や心に響くものが必ず存在し、それが人への影響となっていきます。貴族は子供時代から一流のものに触れ一流を学ぶと言いますが、一流の人が描いたマンガの影響を受けとった人が一流となりさらに別の人へ影響の波を伝える過程で、自分の周りから小さな変化が波及していくのではないでしょうか。

「ワンピース読んだ今の俺は強いよ」効果は捨てろ

一方で漫画の使い方を間違っている人たちもいます。

格闘マンガやヒーローが活躍するシーンを見た後に、やる気や勇気が湧いて何か行動したいと思った経験があるかもしれません。マンガをドーピング的にやる気を出すために使おうと考える人も少なからずいますが、彼らのほとんどがしばらくすると行動を止めてしまい元の生活へと戻っていきます。

「ワンピース読んだから今の俺は強いよ」と言っている人間は、自ら「ワンピース読んでなければ普段は弱い」と言い聞かせている行為と同じで、気持ちよくなるために薬物を摂取し時間もお金も浪費してしまう人間と同じことをしています。

マンガでやる気を出すなんて、ジャンキーと同じことをしている

実際に、自己啓発本やセミナーなどを体験すれば、その直後は学んだ気になって満足度は高くなるかもしれませんが、次から次へともっと強いモチベーションを求めるために気がついたら時間とお金をつぎ込んで何も手に入れてないということに気がつかない人が多いものです。

法律家でありキャリアアナリストであるダニエル・ピンク氏によると、クリエイティブな仕事をする際にはお金や励ましの言葉などの報酬がある場合、仕事の効率が格段に下がったといいます。

『LSEの経済学者が 企業内における成果主義に関する 51の事例を調べました。 彼らの結論は 「金銭的なインセンティブは 全体的なパフォーマンスに対し マイナスの影響を持ちうる」ということでした。』

報酬はクリエイティビティを狭める やる気に関する驚きの科学

いわゆる、マンガなどの自分の外にあるものをやる気や仕事へのエネルギーとして用いようとすれば、それは外部からのインセンティブになってしまうために、自分ではコントロールしづらくなります。外部にモチベーションを任せることは外部に自分の行動を任せることになるので、言い訳を考える人間は非常に消極的へと変わっていくからでしょう。

逆に、「やりたい!面白そう!好きだから!上達したい!」という自分の内から出る内部のインセンティブがあれば、やる気は下がることがなく常に目的への行動を続けるので、わざわざ「マンガを読んでやる気を出してから」と考えることすらありません。

では、一体マンガはどういったことに役に立つのでしょうか?

マンガは想像力のバイク。バカをよりバカにし、優秀をより優秀にする。

『想像力は知識より大切だ。知識には限界があるが、想像力は世界を包み込む。』

これは、相対性理論のアインシュタインが残した言葉ですが、インターネットでいくらでも情報をドラえもんのポケットのように取り出せる今の時代にとって、知識には何も価値はなく、むしろその知識をいかに使うかの想像力が問われる時代になってきたと言えます。

例えば、子供の将来なりたい職業ランキングではスマホやテレビを触りすぎて想像することをやめた子供は、自分の狭い知識によって自分の将来の夢を決めてしまうことになり、その結果YouTuberやサッカー選手、公務員や正社員などの身の回りのものでしか自分を語ることができず、簡単に洗脳される対象へと変わってきます。

iPdadの生みの親ですら想像の大切さを知り、子供にiPadを触らせなかった

『マンガを読めばバカになる。マンガを読む暇があれば勉強しろ』と言われて育った人もいるかもしれませんが、要は使い方次第で、バイクに乗って移動時間を縮めて生産性の高い仕事をする人もいれば、暴走族として深夜を徘徊して何も生産しない人もいます。

問題なのは、世の中の大抵の人たちがマンガを暴走族のバイクのように現実逃避の道具として使っているということで、表現力を学んだりアイデアを探求するような目的のために使えていないことなのです。

これからの時代に主流となる漫画やゲーム、イラストなどのコンテンツクリエイターともなれば、いかにアイデアを思いつくことが重要となってきますが、そのアイデアというのはかつて自分が見てきたコンテンツに左右されることがとても大きくなります。

映画はハリウッド、音楽はイギリス、ファッションはフランスと一流の国には世界中から人も金も流れ込んできますが、マンガの世界一は日本であるためそこに暮らしている我々はマンガを読むことで常に世界一の品質に触れることができ、世界一の品質に触れたことによって自ら生み出すコンテンツは自然と品質も高くなってくるものです。

世界一のディズニーアニメに触れた手塚治虫は斬新なマンガスタイルを確立した。

頭が良くなると道筋が見えても恐れを抱き行動を止め、頭が悪いと行動はしてもその先の展開に行き詰るものですが、もっと気楽に主人公に自分を投影しながら自分もスキルを身につけ行動をするくらいの気持ちの方が上手く書籍や漫画を活用できるのかと思います。

自分のアイデアを形にできるかがこれからの勝負

「ドラゴン桜」「インベスターZ」を手がけた三田紀房さんによれば、「アイデアは思いつくものではなくネタはどこにでも転がっているので、悩む暇があれば身の回りのものからどんどんキャッシュに変えていく」といいます。

結局のところ、今注目を集めている科学者や起業家、アーティストも自分の好奇心や興味を膨らませて想像してそれを形にした結果、他の人の興味を引きつけて成功したということが多いのです。

例えば、江戸時代には活版印刷がなかったにもかかわらず、春画(エロ本)が1200種も刊行されていたと言いますが、性に好奇心を持ってそれを膨らませて発表した人が数多くの注目を集めました。そしてこの春画を書いていた人物が実は喜多川歌麿や葛飾北斎という後世にまで名を轟かせる偉大な浮世絵師であったことは実に興味深いものです。

エロを膨らませた歌麿や北斎は一流となった

任天堂もまた、当初はヤクザ事務所の近くで花札を製造する小さな会社でしたが、そこに入社した横井軍平という人物が仕事に退屈して自作の工作で遊んでいたところ社長の山内に発見され、「それをおもちゃにしてみろ」といわれ作ったところ、「ウルトラハンド」と言う名前で商品化され大ヒットを飛ばすことになります。

結局、アイデアというものはマンガや書籍やネットなど、いろんなところに散らばっているものなので、あとはその中から楽しそうなものを見つけてどう形にするかであり、形にできない人間は消費者で終わり、形にできるものだけがクリエイターとして活動していけるのだと思います。

諦めずに新たな作品を模索し続ける者へ

優れたアイデアというものは最初は多くの批判か嘲笑を集めるものですが、それでもやり続けて形にした時に大きな衝撃を与えることになります。

60歳を過ぎてアンパンマンをヒットさせたやなせたかしさんは、当初アンパンマンの絵本を作成した時、編集者から「やなせさん、こんな絵本はですね、これっきりにしてください。」と言われ、保護者からも「ボロボロになって自分の顔を食べさせるヒーロー」に対して非難が殺到し、自身も初版のアンパンマンの中に「さて、こんなあんぱんまんを、子供たちは好きになってくれるでしょうか。」とぼやいていたそうです。

しかし、やなせは「相手を叩き潰すような戦争賛美のヒーローではなく、本当の正義の味方は、まず困った人や飢え死にしそうな人に一切れのパンをあげるということだ」と信じており、その結果じわじわと3歳〜5歳の子供たちの間でアンパンマンの人気が出てきたと言います。

By 京浜にけ - 美術著作物の題号:アンパンマン設置場所:やなせたかし朴の木公園園内[1]著作者:やなせたかし, 日本著作権法46条/米国フェアユース, https://ja.wikipedia.org/w/index.php?curid=3293789

結局のところ、いくら金を積んでセミナーや大学に行こうが、漫画や書籍を読もうが、「自分の知識を想像力と結びつけて行動しなければ何も始まらない」ということなので、これを読んでいるあなたはボケっとしてないで自分の思いつくアイデアを行動に移してください。そこからしか結果というのは生み出されないのですから。

毎年新たなストーリーと技術を生み出すピクサーの社長 エド・キャットムルは新しいこと求める社風に対して次のように述べていました。

「生前、ウォルト・ディズニーは常に変化し、新しいものを取り入れ続けていた。何ひとつとして、過去に留まるものはなかった。事態が凍結したのは、彼の死後だ。社員たちは『ウォルトならどうしただろう?』と考え、身動きが取れなくなった。だがウォルトは生前、とにかくいつも何かをやり続けていた。ピクサーでは、その変化の精神を受け継いでいる。我々は今後も、これまでとは違う新しいことをやり続けていくだろう。」

15人の作家が数年かけてようやく1つの映画のストーリーが完成するPIXAR By [2] - [1], CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2220718

多様で斬新さを求める今の時代、いかに人と違う視点で物事を捉えられるかが鍵となってきますが、もしかしたら様々な視点で描かれている漫画が助けとなり、今後日本の漫画愛読者から世界を牽引するような大きなアイデアが生まれてくるかもしれません。

参考書籍・サイト

面白い生き方をしたかったので仕方なくマンガを1000冊読んで考えた / 堀江貴文, 人生で大切なことは手塚治虫が教えてくれた / ラサール石井, 人生と勉強に効く学べるマンガ100冊 / 佐渡島庸平 、里中満智子ほか, マンガ熱 / 斎藤宣彦, 漫画貧乏 / 佐藤秀峰, 絶望の隣は希望です / やなせたかし, ピクサー成功の魔法 / ビル・カポダイ、リン・ジャクソン, 井上雄彦 meets ガウディ, 成毛眞のスティーブ・ジョブズ, やる気に関する驚きの科学 / ダニエル・ピンク

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