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悪の定義『悪人は自分に目を向け善人は他者に目を向ける』

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もしかしたら漫画ワンピースの主人公ルフィは、現実社会で言えばテロリストであり悪の存在なのではないでしょうか。

世界に挑戦状をたたきつけ、どれだけ強大な敵であろうとも臆することなく夢を掲げて命をかけている姿は、ISISや新興宗教、マフィアやヤクザといった組織活動に似ていますし、自分の我を押し通すために今あるシステムを破壊しようとする行為は社会から敵視されやすいものです。

とはいえ、ルフィはガンジーやチェ・ゲバラといった今ある仕組みに意を唱える偉人たちと似ており、当時の世間的に見れば悪ですが後になって見ると「なんで当時はこんなことがまかり通っていたんだ?」と思えるほど当たり前のことを主張する善とも捉えることができるので、考えれば考えるほどその行為の善と悪の境がわからなくなってきます。

啓蒙期の思想家ヨハン・カスパー・ラヴァーターは神に近い牧師として活動していましたが、善悪に関して次のようなことを述べています。

Mistrust the person who finds everything good, and person who finds everything evil, and mistrust even more the person who is indifferent to everything.

かつて「魔女狩り」や「十字軍」といった神や政府の名の下に殺人や戦争が起こされる事実があったことを考えると、人を善い方向に導くための宗教や教義を利用して利益を生み出した権力こそ悪ともいえるかもしれませんが、何事にも無関心で流されていた人たちも悪だったかもしれません。

たとえば、政治家の悪い部分がテレビで流されることがありますが、もしかしたらその政治家を選んだ国民にも責任があり、総務省の公表する日本の投票率が50%という事実を考えると、「我関せず」という態度と無知な人間こそ金を持った悪の権力に加担しているのかもしれません。

今回は、そういった無関心から少しでも脱却し「悪」とはなんなのかについて考えることで、気付かないうちに加担していたかもしれない悪やその危険から逃れるための知恵を手にしていきましょう。

 

正義も悪も、絶対的な神ですらも”確実なもの”は存在不可能

ノーベル物理学賞を受賞したドイツの理論物理学者ヴェルナー・ハイゼンベルクが1927年に提唱した不確定性原理やクルト・ゲーテルの不完全性定理によれば、「この世の中の存在というものは、確率的であり正確に計測することも証明することも不可能」だということが証明されています。

つまり簡単に言えば、”完璧なモノサシ”がこの世には存在しないので、善と悪を測ることは不可能だということです。

 

この世に絶対に正しいと言えるものは一つもない

この考えを受け入れていれば、たとえテレビやマスコミなどの大多数が悪として報じていることでさえ、「悪とは限らないのではないか」と考えることができ、最悪の事態を避けることができるかもしれません。

たとえば、「アーリア人至上主義」を唱えてユダヤ人を殺してもいい絶対悪として大衆にラジオや拡声器を使ってストーリーを語ったアドルフ・ヒトラーは、ありとあらゆる手法を使ってユダヤ人は絶対悪ということを大衆の脳に刷り込むためにとても巧妙な洗脳テクニックを使ったと言います。

ヒトラーは今となってはおかしいと感じるようなナチ党綱領(政策方針)を改正しようとしませんでしたが、その理由として「支配される人間が何も考えていないのは政府にとって幸いだ!」と答えており、ここでも大衆は無関心で流行りのヒトラーについていったためにホロコーストという最悪の事態が起こったことが伺えます。

その後、ユダヤ人はヨーロッパを離れて中東のパレスチナへと逃れると、そこを占領して”イスラエル”というヴァーチャルな国家を創りましたが、2017年末になってトランプ大統領がエルサレムを首都と認めたことでヴァーチャルだったものがリアルな国へと近づきました。

占領されたパレスチナ側からしたら悪の手によって侵略されたと感じる一方、イスラエルを「神から約束された地」と信じて疑わないユダヤ人にとっては、邪魔をする者こそ悪と捉えます。

自分たちが信じる正義のために戦うイスラエルの女性兵士 השבוע התקיים שבוע שדאות של קורס מדריכות חי"ר באזור דרום הארץ, במהלכו תרגלו החיילות תרגילי פרט חולייה, ניווטים, שינה באוהלים והסוואה. עם סיום הקורס תוצבנה החיילות בתפקידי הדרכה שונים בזרוע היבשה.

たとえば、あなたが住み慣れた土地に外国人が押し寄せてきて、勝手に国と宣言されれば戦ってでも土地を取り戻そうとするでしょうが、中東に支配を伸ばして利益を拡大したいアメリカにとっては利益を邪魔する者こそ悪という認識に変わります。

このように、一方だけが完全に悪だということが存在することはあり得ず、どちらが善でどちらが悪かを判断するためのモノサシを作ることも不可能なためそれが武力行使へと発展することが多々あります。さらには、もしあなたが何かに対して悪や善の印象を持っていた場合、それは何者かの手によって印象操作をされている可能性があることも視野に入れる必要が出てきます。

洗脳とは善悪を判断することである

モスクワ国際関係大学を卒業しロシアの大統領とも接触のある政治経済ジャーナリスト北野幸伯さんは、世界にはいくつかの情報ピラミッドが存在しており、ピラミッドごとに一つの事件に対する見解が違うと指摘していました。

たとえば、日本はアメリカ・イギリス情報ピラミッドの中に属していますが、そのほかにも中国ピラミッド、欧州ピラミッド、中東ピラミッド、クレムリン(ロシア)ピラミッドが存在しており、一つの事件に対する報道のされ方はピラミッドごとに変わってくるといいます。

ピラミッドに合わせて情報は加工され報道される

イラク戦争当時、ブッシュ政権は「イラクは大量破壊兵器を保持している」として空爆を行いましたが、こうしてメディアでフセイン前大統領を悪人として報じることによって空爆はテロではなく正当な攻撃だと報じましたが、後にイラクは兵器など持っておらず、空爆はアメリカの利権を守るものだと判明しました。

イラク側からすればテロ行為であるその戦争でフセイン大統領は殺されており、一方的な攻撃を仕掛けるアメリカに対して副首相のアジズ氏は戦前カメラの前で次のように訴えていました。

「ブッシュ大統領は偽善者だ。本当のクリスチャンは戦争を煽ったり、殺人を企てたりはしない。」

北野さんによれば、別のピラミッドからの視点を知ることで自分のいる偏った情報から抜け出せるといいますが、大半の人がいちいち情報を精査することはないために、情報を発信する側に都合が良いような価値観を植え付けられていることに気がついていないといいます。

気を抜けば発信者の都合の良い価値観に変えられていく

これは何も国や大きな枠組みの話だけではなく、たとえば日本の広告産業の市場規模は約6兆円ありますが、これは印象を与える対象がピラミッド内の国民から購買者へとすり替わっただけで、我々はCMやメディアを通して良いと判断したものを無意識に購入することで広告という"価値観刷り込み業界"に資金を提供していることになります。

テレビ番組などのメディアはスポンサーがいる限り利益が発生するため、何かに対して善悪を植え付ける必要がありますが、その本質に気づけない人はニュースやテレビで報じられることを鵜呑みにしてしまうナチ党支持者のような多数派の悪となってしまう可能性があります。

本当に正しいと思ったことなら法や他人の目などクソ喰らえ!

現在常識とされることが一昔前までは非常識だったことというのは多く、例をあげれば、「黒人は白人よりも下等種族」「インドはイギリスに支配されるべき存在」「キューバはアメリカの経済的従属国家」という常識はそれぞれマーティン・ルーサー・キング・ジュニア , マハトマ・ガンディー , フィデル・カストロチェ・ゲバラによってひっくり返されました。

Many will call me an adventurer, and that I am... only one of a different sort: one who risks his skin to prove his truths. 左:チェ・ゲバラ 右:フィデル・カストロ

Appleの創業者ジョブズとウォズニアックは、創業前に二人で電話会社のシステムに侵入して無料で電話をかけるブルーボックスを作って売ったり、ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグもまた学校のシステムをハッキングしてコンピュータを使っていましたが、本当に自分たちが信じることであれば常識や法律に関係なく声を上げるべきではないでしょうか。

世界中の人が自由に論文にアクセスできるようにするために論文データベースに侵入したアーロン・スワーツ氏は、不正ダウンロードによって35年の懲役を課され、その2年後、26歳の若さで自ら命を絶ってしまいました。スワーツ氏は著作権などの法律の不当な部分を正す活動をしており、彼を知る人は「フリーカルチャー運動の賛同者で、絶え間なく活動し、代償を求めなかった。」と述べています。

 

あるべき姿のために権力(SOPA)に抗議するスワーツ(2012年) Photo By Daniel J. Sieradski - Flickr: Aaron Swartz, CC 表示-継承 2.0,

法を犯してでも正しいと思ったことをした人たちは「本来あるべき姿」を想像していたために、たとえ逮捕や権力に潰されたとしてもフォロワーによって目的を成し遂げられたり、再び再起することができており、事実、ホセ・ムヒカ氏やリチャード・ブラウンソン氏、堀江貴文さんやネルソン・マンデラ氏といった多くの革命児は投獄経験を乗り越えてから結果を出しています。

物語に登場するヒーローは、自分の信じる正義を貫いて一人でも戦う勇気を持っていますが、悪事を働きたくないというのであれば、一度自分にとっての悪とは何かを考えて、他人が決めたルールよりも自分が正しいと思う価値について考えてみてはいかがでしょう。

悪とは理解力と想像力の乏しい者の押し付け

イギリスのリーズ・メトロポリタン大学のスティーブ・テイラー博士は、「悪人とは他者に共感することができずに、自分のエゴや欲求を一番大切にしている人物」だと述べており、確かにヒトラーやスターリンといった独裁者は自らの利益を守るために弱者を排除し、ガンディーやキング牧師は弱者に共感して権力に立ち向かうという真逆の行為をとっていることがわかります。

”Freedom is never voluntarily given by the oppressor; it must be demanded by the oppressed.”  Photo By Minnesota Historical Society

多くの宗教や道徳、哲学では「他人から自分にしてもらいたいと思うような行為を人に対してせよ」という黄金律が善として数千年前から伝わっていますが、これは共感と言い換えることもでき、逆に人に対する共感を欠いた行動こそが諸悪の根源と成り得るのではないでしょうか。

事実、多くの偉業を成し遂げた人たちは必ず「世の中に必要なこと」や「大多数を幸せにすること」という他者への理解・共感からアイデアをスタートさせていますが、猟奇的殺人鬼や権力を行使する人間は「いかに自分の欲望を満たすか」や「自分の利益になること」というナルシズム的な視点から考えるために、結局他の人間どころか、自分さえも欲望に溺れて不幸へと向かっていくのだと考えられます。

自分の欲望ではなく、本当に大切と思う価値があると思うならどんな敵にも立ち向かえ

とはいえ、人間とはこの「他者への共感」と「自分の欲望を満たす」という二つの極端を振り子運動のように行き来していく不安定な状態で、結局このパラメーターをいかに他者指向へと変えるかが自他共に認める善となり、悪を避ける方法なのではないでしょうか。

結論:世の中は諸行無常であり絶対悪は存在しない

17世紀のオランダの哲学者バールーフ・デ・スピノザは自身の記した倫理学の哲学書『エチカ』の中で善悪に関して次のように述べています。

「一つのものが同時に善であったり、悪であったり、そのいずれでもなかったりすることがある。例えば、音楽は憂鬱な人には善であるが、喪に服している人には悪であり、耳の聞こえない人にとっては、善でもなく悪でもないものである。」

 

 

 

たとえ世間一般から悪とされるものが善行をすることもあれば、善とされるものが悪事を行うことも多々あり、例としては東日本大震災発生の時に山口組や住吉会といったヤクザ組織は数時間後には支援活動に乗り出して事務所や食糧を提供したという話がある一方、3000億円以上の義援金を集めた日本赤十字社は数ヶ月間銀行にお金を預けることで多額の利子を受け取っていたという話も上がってます。

『ガリバー旅行記』の作家ジョナサン・スウィフトは「モラルという点に関しては服役中の犯罪者も上流社会の人間もそう変わらない」と言っており、世間から貼られているレッテルが違うだけで、実は表社会でも仮面を被っている悪は予想以上に多いのかもしれません。

表では仮面を被った悪魔は予想以上に多い。

結局、本当に多くの人を幸せに導くような善行を成していきたいと考えるのであれば、先入観にとらわれずに他者に光をあてるような視点で物事に取り組むべきではないかと思います。

もう、マキャベリの君主論的な”己の目的を達成するために弱者を犠牲にする”ような時代ではないのですから。

【参考書籍・引用元】

人はなぜ、宗教にハマるのか? /  苫米地英人 ,最強マフィアの仕事術 / マイケル・フランゼーゼ, ONE PIECE / 尾田栄一郎 集英社 , 正義という名の洗脳 / 苫米地英人 , ヒトラー悪の言葉101 / 20世紀ドイツ史研究会 , 日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理 / 北野幸伯 集英社 , 悪役 世界でいちばん貧しい大統領の本音 / アンドレス・ダンサ, エルネスト・トゥルボヴィッツ 汐文社 , 切れ者マフィアに学ぶ「できる男」88の知恵 / ルイス・フェランテ , イスラム国 テロリストが国家をつくる時 / ロレッタ・ナポリオーニ 文藝春秋

【筆者所感】

私の好きな漫画ジョジョの奇妙の冒険の第3部で、空条承太郎のセリフに「『悪』とはてめー自身のためだけに 弱者を利用しふみつけるやつのことだ!!」というものがありますが、まさに悪について調べていくうちにこのセリフの説得力が増していきました。

本当はマフィアだけでなく、イルミナティなどの「陰謀」をもつとされる秘密結社や、近年台頭してきた「海賊党」、「アノニマス」に関しても調べていたのですが、記事では書ききれませんでした。

調べているうちに世間で悪と思われていることの多くが、実は「違った形の他者指向」である場合が多く、一度レッテルを貼られてしまったがために悪名として知られた場合も多々ありました。

是非とも先入観や常識にとらわれずに、調査という行動をしてみて自分なりの正しさや善行をしていってくれればと思います。

尚、この記事は特定の人物や組織を批判するものではなく、この記事に書いてある通り、「何かに関して善悪の印象を持ったら洗脳の始まり」なので、実際に自分で調べるなりしてから判断してください。

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